とり子の楽観主義

オプティミストを目指すとり子の雑記ブログ。

【おすすめ】社会人になって伊坂幸太郎著『砂漠』を読み返してみた【感想】

砂漠を読み返してみた

私は伊坂幸太郎さんの作品が好きです。

日常の中の非日常のストーリーを、独特の視点かつユーモアをもって展開していく作風が好きですし、エンターテイメント性に長け、見事に伏線を回収していく点は爽快ですらあります。

また、会話劇の要素が強く、登場人物により粋な会話が繰り広げられるところも好みです。

つまり、印象に残る登場人物の台詞が多いわけですね。

 

今回は、私が学生の頃読んで感銘を受け、社会人になったら読み返したいと思っていた小説、『砂漠』について書きたいと思います。

 

 

社会人こそ唸らされる点の多い小説『砂漠』の魅力とは

あらすじ

 

文庫版裏表紙の梗概を見ると、このように本書のあらすじが紹介されています。

入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決・・・・・・。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれを成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。

 

これを読むと奇想天外青春物語!のような印象を受けてしまいますが、本書の魅力はそれに留まりません。

 

ゼロイチ思考の思い込みを粉砕してくれる

この本のことを書こうと思ったのは、前回の記事でゼロイチ思考について触れたからです。

torikooptimism.hatenablog.com

ゼロかイチかという両極端な考え方が行動できない原因になってしまう、という内容の記事です。

 

この記事を書いていると、『砂漠』の印象的な登場人物、西嶋のことを思い出しました。

西嶋は『砂漠』の登場人物の中で一番の変わり者。

周りがちょっと首をかしげしてしまうような言動が多いのですが、物語の随所で強烈な持論を展開してみせます。

 

この西嶋の主張を読むのが実に面白い。

思い込みで凝り固まった頭に、どかんと衝撃を与えてくれます。

そのため、初めて本書を読んだときに「より社会を知るようになったら、またこの本を読んでみたいな」と思ったわけです。

 

はっとさせられる西嶋の台詞

砂漠 感想

物語中、ある合コンの席で、空気を読まない西嶋が持論を展開するシーンがあります。

合コンに参加した女性陣が、

何かの団体にお金を寄付するのは、少しのお金じゃ何の足しにもならないし、偽善っぽい、1つに寄付して他のところに寄付しないのは首尾一貫してない

というような話をしているときに、西嶋のスイッチが入ってしまいます。

 

「そうやって、賢いフリをして、何が楽しいんですか。この国の大半の人間たちはね、馬鹿を見ることを恐れて、何にもしないじゃないですか。馬鹿を見ることを死ぬほど恐れてる、馬鹿ばっかりですよ」

伊坂幸太郎著『砂漠』p108から抜粋

 

熱弁する西嶋に女性陣が「引く」中、勢いに乗った彼はなおも持論を展開し、こう締めくくります。

 

……目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ」

伊坂幸太郎著『砂漠』p110から抜粋

 

設定では、西嶋含め主要な登場人物は皆大学生です。

ゆえに「青さ」を感じるものの、大人の私達がどきっとさせられる「真実味」を帯びた台詞でもあります。

 

口だけで終わらない

言うは易し行うは難しと言いますが、伊坂作品の面白いところは、上に引用したような会話が会話で終わってしまわないところ。

この作品で一番記憶に残ったのは、動物管理センターで保護されている犬を西嶋が引き取る場面です。

 

犬を連れた西嶋を見て、作品のナビゲート役、客観的な視点を持つ「鳥瞰型」の北村は、西村が突発的な行動についてどのように自分で納得しているのかと尋ねます。

 

すると西嶋は、

「納得?突発的?だって、誰も引き取りに行かなかったら、こいつはピンチだったんですよ、大ピンチですよ」......

 「ピンチは救うためにあるんでしょうに」

 伊坂幸太郎著『砂漠』p290から抜粋

と淡々と言い、続く北村の

「でもさ、西嶋、その一匹だけ救って、後は見て見ぬフリというのも矛盾しないかな?」

という問いかけには、

「矛盾しちゃいけないって法律があるんですか?」

 伊坂幸太郎著『砂漠』p291から抜粋

と一刀両断します。

 

西嶋には彼自身の哲学があって、それを実践しているわけです。

一般人的な視点を持つ北村や合コンの女性陣の、ゼロイチ思考で言うところの「イチ」ができなければ意味がない、という考えを粉砕する行動を見せてくれるんですね。

 

西嶋の中では、

全部できないと意味がない → やらない

という考え方はなく、

目の前に自分にできることがある → やる

を選択しているわけです。

 

こういった西嶋の言動に、読んでいるとどきっとさせられます。

自分のやりたいことなら、世間一般の概念に囚われず、たとえ矛盾していたとしても自分の哲学を貫けばいいんだな、と思わせてくれる印象的なシーンです。

 

終わりに

今回は、小説『砂漠』を、印象的な台詞を中心にご紹介しました。

社会に揉まれる働きマン、疲れた大人にこそ、響く台詞があるのではと思います。

 

昔、私が小説を読むのが好きだと言うと(←学生時代は小説ばかり読んでいた)、ある人に「小説は時間の無駄だから読まない。小説を読むぐらいならビジネス書など勉強になる本を読む」と言われたことがあります。

その時に若干イラッとしたのと同時に(笑)、「この人、面白い小説に出会ったことがないんだ。可哀想!」と感じました。

もちろん価値観は人それぞれですが...

学ぼうと思えば、小説からだって学べるのにね! 

昔読んだことのある本(小説)を、時を経てから再び手に取ってみると、今の自分だからこそ響くような思わぬ気づきがあるかもしれませんよ。