とり子の楽観主義

オプティミストを目指すとり子の雑記ブログ。

【映画】妻のこと、どれだけ知っていますか?愚かで哀れな男の『永い言い訳』を聴く

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今回は、映画『永い言い訳』を観た感想を書きたいと思います。

私の大好きな西川美和監督の作品です。

これまでの西川監督の作品と同様に、人間の本質や他者との関係性を鋭い視点で描かれています。

夫婦とは? 人生とは?

結婚している人ならきっと、パートナーとの関係について考えさせられると思います。

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「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」

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『永い言い訳』あらすじ

 

人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、ある日ツアーバスの事故で長年連れ添った妻、夏子を亡くします。

幸夫と夏子の関係は、長い年月の中で冷めきっていました。

幸夫は夏子が亡くなった日に愛人とよろしくやっていたという始末。

 

彼は妻の高校時代からの親友の名前も、妻に親友家族との深い交流があったことも知らないし、妻が最期の日に来ていた洋服の色すら思い出すことができません。

 

ある日、幸夫は夏子と一緒に事故で亡くなった夏子の親友の夫、陽一と出会い、ひょんなことから陽一や彼の子供たちとの交流が始まります。

そんな「家族ごっこ」の日々の中で、幸夫はようやく亡き妻と向き合い始めるのですが...

 

西川美和監督の作品の魅力

『ゆれる』『ディアドクター』『夢売るふたり』等、これまでの西川監督の作品を観たことがある方なら分かると思いますが、西川監督は人間の真実を描くのに非常に長けています。

本作もこれまでの作品も、自ら脚本を手掛け、小説すら書いてしまう生粋の表現者です。

 

本作『永い言い訳』は2016年に公開され、原作である同タイトルの小説は2015年に出版されています。

発売されてすぐに原作を読んだのですが、面白いのは、同じ物語でも描き方、語り方が小説と映画で異なるところ。

それぞれの持ち味を最大限に活かし、それぞれを秀逸なエンタメ作品として成立させているという、恐ろしいまでのセンスと才能に脱帽です。

 

自分のことばかりだった夫が、妻を亡くして悟ったこととは?

家族との関係

コンプレックスとプライドの塊の夫

幸夫は「津村啓」として活躍する人気作家なのですが、本名は有名な野球選手と同名の「衣笠幸夫(きぬがささちお)」。

自分の名前に強いコンプレックスを持ち、仕事の関係者の前で本名を呼ぶなと妻に言うほどです。

 

妻の死に涙を見せることもなく、弔辞の内容やメディアからの見え方を気にし、葬儀後にはネットで自分を「エゴサーチ」するなど、自分への注目度の高く、プライドの高い人間であることが見て取れます。

 

そんな調子だから、これまで長く連れ添ってきた妻のことを全く見ていませんでした。

夏子が誰と、どこに旅行に行くのかにすら関心が無く、妻の死を全身で嘆き悲しむ陽一とは対照的に描かれています。

 

彼の名前が幸せな夫と書いて「幸夫」であることは、強烈な皮肉となっていますね。

 

そんな幸夫が始めた「家族ごっこ」。

トラック運転手で家を不在にしがちな陽一に代わって、子ども達の世話を買って出ます。

陽一や子どもたちと交流する中で、自分が今まで蔑ろにしてきた、他者(愛する者)との関係性を見つめ直していきます。

 

終盤で幸夫がノートに書きなぐった、後悔の念を帯びた人生についての言葉が胸を揺さぶります。

 

潔いほどに妻サイドの描写がない

本作では序盤で幸夫の妻、夏子が亡くなってしまうのですが、それ以降は妻側の心情や幸夫との思い出が描かれることはありません。

 

妻が幸夫との関係をどう思っていたのか、親友家族の前ではどんな顔をしていたのか、そういった、ドラマで挿入されがちな回想シーンが一切無く、観る者には幸夫と同様に、夏子の過去を知る術はありません。

(原作では一部あるんです。映画では描かないところがまた粋だなと。)

このことが、取り残された幸夫の愚かさや哀れさを一層引き立てているように感じました。

 

唯一、妻の過去と幸夫の現在を繋ぐのは、壊れたはずの妻の携帯に一瞬だけ表示された「もう愛していない。ひとかけらも。」という未送信のメッセージ。

いつ書いたのか、どんな心境で書いたのか等の背景を一切語ることのないこのメッセージが、タイムマシンのように時を越えて、「家族」を知った気になっていた幸夫に届いてしまう残酷さ。

にくい演出で、非常に印象的なシーンです。

 

終わりに

この作品には、感傷的に描かれないからこそのリアルさがあります。

映画を観てから再び原作を手に取ってみると、初めて読んだときとはまた違った面白さや発見がありました。

(小説版の方が、よりリアルで怖い部分があるかな。)

幸夫のような「永い言い訳」をしないで済むように、限りある時間をパートナーと向き合って生きていきたいものです。

 

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