とり子の楽観主義

オプティミストを目指すとり子の雑記ブログ。

窪美澄著『雨のなまえ』は、現代の「こじらせた」人々によるホラー劇だ【感想】

『雨のなまえ』はもはやホラー

雨の日は外に出るのは億劫になりますが、読書や地道な作業をするには適してると思います。

そう、ブログを書いたりですね(笑)

今回は、雨が印象的な窪美澄さんの小説『雨のなまえ』をご紹介したいと思います。

 

 

怖いものみたさを刺激する短編集

『雨のなまえ』感想

小説『雨のなまえ』基本情報

 

雨を題材にした5編の短編集。

以下に、それぞれの物語の概要を文庫版の帯から引用します。

「雨のなまえ」― 出産を間近に控えた妻に怯える男

「記録的短時間大雨情報」― パート先で働く大学生に恋する中年の主婦

「雷放電」― 美しい女と二人だけの世界に浸る男

「ゆきひら」― 心に傷を抱える中学教師

「あたたかい雨の降水課程」― 仕事と子育てに追われるシングルマザー

 

窪美澄さんの作品の魅力

作者の窪美澄さんは、2009年第8回女による女のためのR-18文学賞を受賞し作家デビュー。

デビュー作である『ふがいない僕は空を見た』は、第24回山本周五郎賞を受賞しています。

窪さんの作品の魅力は、まるで登場人物の生活の中に自分が入り込んだかのような緻密な人物描写、ドキュメンタリーを見ているかのような現実的な物語の一方で、エンタテイメント性に富むストーリー展開、圧倒的な文章力だと思います。

初めて『ふがいない僕は空を見た』を読んだときに大きな衝撃を受けました。

端的に言えば、これを書いた人は天才だと思いました。

圧倒的な創造/想像力と努力の結果であろう作品の感想としてはかなり単純ですが。

 

ちなみに映画化もされています。

 

『雨のなまえ』はもはやホラーだと思う

ちなみに、『雨のなまえ』はハッピーなお話ではありません。

窪美澄さんの作品には、登場人物が人生にもがきながらも一筋の光を見つけるような物語の印象があったので、少し意表を突かれました。

『雨のなまえ』に収録された5編の主人公は皆、「こじらせた」人たちです。

現実に直面することを恐れて逃げ出そうとしたり、手が届きそうもないものに希望を託したり、自分の創った世界に閉じこもってしまったり。

ある程度生きていると、人生をこじらせ、方向を誤っていく彼らの姿を全否定できないはず。

読んでいると、思い通りにならない人生に苦悩する登場人物の姿に共感し、「いやそうじゃないでしょ」とはらはらしながら読み進め、物語の終わりには恐怖にも似たざわざわ感を味わいます。

 

そして思いました。

もはやこの作品は、幽霊の登場しないホラーストーリーではないかと。

 

ホラーはいつの時代も人を惹きつける魅力を持っています。

よせばいいのに、たまにホラー映画って見てみたくなりませんか?

クッションなんかで時折画面を見ないようにしながら、鑑賞後にひとりでお風呂に入るのが怖くなるのが分かっていても、見てしまうんですよねぇ。

 

とは言え、本書はホラー映画によくあるような、異質なものに対する恐怖を煽るものではありません。

本書がホラーだと思うのは、読み手の怖いものみたさを刺激するエンタテイメント性を持っているからです。

自分も一歩踏み外してしまったら、こんなことになるのではないかという身近な怖さが、それぞれのお話にあります。

特に2作目の「記録的短時間大雨情報」は、結末に「あぁぁぁぁ」と小さく声が漏れてしまいました。


唯一救いがあるのは最後の「あたたかい雨の降水課程」でしょうか。

本書の解説にて作家の篠田節子さんも、「この短編をラストに配したのは、読者への配慮だろう」と書かれいます。

 

終わりに

今回は、私が雨の日に思い出す小説、『雨のなまえ』をご紹介しました。

短編集なので手軽に読めますし、雨の日にちょっと手にしてみるには最適だと思いますよ。